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連載 コラーゲンの基礎の基礎

コラーゲンの基礎の基礎(下)

コラーゲンの種類(1型、2型、3型など)

現在、29種類のコラーゲンが存在することが確認されており、その種類は発見された順にI型、II型、III型…と名付けられています。型によって存在部位・構造・機能が異なっており、例えば、体内のコラーゲンの90%を占めるI型コラーゲンは皮膚、骨、腱、角膜などに、II型コラーゲンは軟骨に、Ⅲ型コラーゲンは皮膚や血管壁に多く含まれています。なお、皮膚に存在するコラーゲンは①真皮を構成するⅠ型・Ⅲ型・Ⅴ型コラーゲン(真皮コラーゲン)、②基底膜に存在し、表皮を健やかな状態に保つはたらきを有するⅣ型コラーゲン(通称:メッシュコラーゲン/シート型コラーゲン)、③上皮(基底膜近傍?) に存在し、真皮と基底膜をつなぐ役割のアンカリングフィブリルであるⅦ型コラーゲン (通称:吊り型コラーゲン) です。なお、Ⅲ型コラーゲンは胎児期に多く生成されるコラーゲンであることから、通称「ベビーコラーゲン」と呼ばれています。これらコラーゲンを保護し、産生を促進することが肌のハリ・弾力を維持するために重要であると考えられています。

知っておきたいコラーゲンの原料?豚?魚?サメ!?

コラーゲンは動物(牛・豚・鳥等)や魚の皮等から抽出されますが、同じⅠ型コラーゲンであっても由来によってアミノ酸組成や熱に対する安定性が異なります。
例えば、ブタ・ウシ・サメを比較した場合、サメ由来のⅠ型コラーゲンのアミノ酸組成は、ブタやウシ由来と比較してヒドロキシプロリン及びプロリンの含有量がわずかに少なく、イソロイシン及びメチオニンがわずかに多く含有されています(表4-1)。アミノ酸組成の違いにより分子量は若干異なりますが、動物種間において分子量分布パターンに違いはほとんどありません(図4-2)。
また、コラーゲンが熱により三重らせん構造がほどけ、ゼラチンになる温度を変性温度と呼びます。変性温度は動物種によって異なり、温暖な環境に住む生物は変性温度が高く、寒冷な環境に住む生物は低い傾向があり、これはコラーゲン特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有量に比例していると言われています(図4-3)。

化粧品原料としてコラーゲンが利用され始めた当初は、主にウシ由来コラーゲンが使用されていましたが、BSE(牛海線状脳症)の発生により、平成7年頃から化粧品メーカーがウシ由来原料の使用を控えるようになりました。そのため、現在は、豚や魚由来コラーゲンが主に利用されています。

コラーゲンは肌に最適な保湿材

コラーゲンの肌への主な作用は保湿効果であり、その効果は分子量に比例します(図)。例えば、アテロコラーゲン(Mw 30万)、ゼラチン(Mw 10万)、加水分解コラーゲン(Mw 1500)の水分保持力を比較した場合、アテロコラーゲンは加水分解コラーゲンの13倍、ゼラチンの4倍の保水力を有することが分かっています(図5-1)。

一方で、近年は角層への浸透性をコンセプトにする企画が増え、コラーゲンに対しても浸透性を求める声が多くなりました。そのため、肌への浸透性が高いといわれている分子量250~1000の画分が多く含まれている加水分解コラーゲン(ナノコラーゲン)やリポソームなどに内包化し浸透性を高めた内包化コラーゲン等が販売されています。

また、コラーゲンに化学修飾を加えた修飾コラーゲンも多く販売されています。国内初の修飾型アテロコラーゲンは昭和52年に発売されたコハク酸を修飾し、中性条件での溶解性を高めた「サクシノイルアテロコラーゲン」でした。その後、肌への親和性を高めるため疎水性のミリスチン酸を修飾した「ミリストイルアテロコラーゲン」や「ミリストイルサクシニルアテロコラーゲン」が販売されました。分子量の小さい加水分解コラーゲンはもちろん、未修飾のアテロコラーゲン(水溶性コラーゲン)に比べ、サクシノイルアテロコラーゲン、ミリストイルサクシニルアテロコラーゲンは水分保持力が高くなることが分かっています(図5-2)。また、ミリストイルサクシニルアテロコラーゲンはミリスチン酸修飾により両親媒性の機能が付与されています(図5-3)。

なお、修飾型加水分解コラーゲンに関しては、ヘアケア製品に主に利用されるため、毛髪への効果を高めることを重視し、カチオン化、アシル化、シアル化などの修飾がなされています。
その他にも、コラーゲンを架橋により高分子化した「水溶性コラーゲンクロスポリマー」(通称:多機能型保湿コラーゲン、3Dコラーゲン)や、凍結乾燥したアテロコラーゲンなどが販売されており、今後も、コラーゲンの機能性を向上させた「コラーゲン+機能性成分」のハイブリット型コラーゲンやユニークな剤型のコラーゲンが開発されていくことと思われます。

コラーゲンは最先端のバイオマテリアル

アテロコラーゲンは生体適合性が高いバイオマテリアルであり、ゲルやフィルム、スポンジ等、様々な剤型に加工が可能であることから(図6-1)、医療機器や再生医療、核酸医薬のデリバリー担体等、様々な分野で利用されています。医療機器としては、コラーゲンが体温でゲル化する性質を活かしたドライアイ治療の涙点プラグ用コラーゲン溶液や、止血用のコラーゲンスポンジ、歯周組織再生用のコラーゲンフィルムなどが販売されています(図6-2)。また、コラーゲンは細胞の生長の足場となるため、再生医療の足場材料として利用されています(図6-3)。最近話題となっているiPS細胞や幹細胞を培養(増殖)させるためにも必要な材料なのです。その他に、薬剤の徐放性担体としても利用されています。例えば、核酸医薬の研究において、核酸の体内での安定性の向上とドラックデリバリーシステムの構築が課題となっています。アニオン性の核酸とカチオン性のアテロコラーゲンは相性が良く、複合体を形成します。それにより、アテロコラーゲンが核酸の体内での分解を抑え、且つDDS担体として機能を有するため、がんやアレルギー性皮膚炎等の様々な疾患の研究に利用されています(図6-3)。このように、コラーゲンは化粧品や健康食品などの身近なものから、最先端の研究分野まで、幅広く利用されているバイオマテリアルなのです。

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監修:株式会社高研

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